フリーランスの働き方

やる気という枯渇性天然資源のマネジメント

こんにちは、市原えつこです。(上の写真はダルそうなAIBOです)

 

先日、独立3年目の決意表明のようなイキった記事を書いた矢先、同時期にじわじわと気になっていたお悩みがありました。

それは、やる気が出ないこと……!

フリー3年目を蝕むモチベーション問題

独立した直後の頃は、もうやることなすこと、見るもの全てが新鮮。
平日に大手を振って歩く東京の街にもまず興奮するし、クライアントに対して直接お仕事をすること自体が緊張の初体験だったし(会社員の頃は自社サービスのインハウスデザイナーだったので)、全国各地の出張先で自由を実感して雄叫びをあげ、請求書の発行にドキドキし、確定申告にビビりながらどうにか乗り越え、全てが大冒険でした。

Google流 疲れない働き方」によると、人がやる気ややりがいを感じるのは「新規性、予測不可能性、複雑性」がある状況とのこと。
言われてみれば独立したての頃はやることなすこと全てが新規性があり、予測不可能なことが続きます。
もう24時間ビンビンにドーパミン出てるような状態でしたし、比較的短期間で規模の大きめな作品を仕上げたりというハイカロリーなアクティビティも気合で乗り切れました。

が、そういった経験を繰り返すうちに様々なことが「体験済み」のことになっていく。
だんだん「凪」の状態というか、自分のルーティーンのようなものもだんだんできてきます。
フリーで2年間なんてまだ全然経験値としてはひよっこですし「慣れ」てはいけない段階だろがボケがー!!!!と自分をグーで殴りたい気持ちはあるのですが、独立初期のような高揚感はどうしても薄れていきました。

現状で進めようとしている事柄はことごとく自分主導で、自分の内発的動機で自分で攻め込んでいってやらなければならないものなのに、肝心の自分のやる気と創造性とエネルギーの供給がイマイチで進みが遅い。進むべき方向は決まってエンジンをふかそうにもガソリンが足りない感覚。

どうにかならんものか……と考えていた矢先に参加したお花見で解決策を見出しました。

発酵デザイナー・小倉ヒラクさんのやる気(が出ない自分)のマネジメント術

大学の先輩であり、フリーランスの大先輩でもある、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。
会社員の頃からブログを愛読していたのですが、MCを担当していたフジテレビ・ホウドウキョクの番組「H.SCHOOL」にご出演いただいた際についにご対面。(ちなみに当時の模様はこちら→発酵デザイナーが思い描く、未来の「微生物的人間」とは?

©ホウドウキョク

その後も独自研究を詰め込んだ著書の「発酵文化人類学」が(めちゃくちゃニッチな内容にもかかわらず)重版を次々重ねるヒット作になるなど快進撃が続きます。

 

 

傍から見てると、めっちゃやる気が尽きないように見える。
あとアマノ食堂の連載なんかもひとつひとつの記事の熱量とフェティッシュがすさまじく
まさに「内発的動機がこんこんと溢れ続ける人」なのだろうというイメージがありました。

お花見(というか桜をプロジェクションした飲み会)で久々にお会いできる機会があったので、「最近どうにもやる気がハッスルしません、どうしたらやる気が継続するのでしょうか?」と相談してみました。
が、ヒラクさんからの解答は意表をつくもので、

いやいや、やる気が出なくて当たり前だし、そもそもその状態が普通のステータスだから」とのこと。マジか…!!!

 

 

 

やる気ってなくても良かったのか

ヒラクさんの「やる気なんてそもそも出ないものだ」「だからこそやる気がある一瞬の時間を最大化できるようにマネジメントすべき」という発想は自分にとってかなり新鮮で、「やる気が出ないこと」に対して罪悪感を感じていた自分にとって福音のように響きました。

 

 

後日談:最近やる気が復活してきました

「やる気が出ないなんてけしからん」という自分に対するプレッシャーがなくなったからなのか、仕事に海外展開などの新局面が出てきて再び未知の予測不可能領域が増えてきたからなのか、最近またやる気がこんこんと溢れ出るようになりました。
とはいえ24時間稼働しまくれるようなテンションの高いやる気ではなく、「あれをやりたい」「これをやりたい」という着想やモチベーションが色々と湧き出てきて未来が楽しみである、というしみじみとしたやる気なのですが。
「やる気が常にないとダメ」という強迫観念から解放され、「やる気は常になくて当たり前」というゆるい考え方ができるようになると逆に意欲が復活していくようです。

組織に属して働いている身ではない以上、自分で自分のやる気をコントロールしていくのが必須なスキルになっていくと思うので
「自分を飼いならす」「自分をうまく騙す」「自分の機嫌をとる」という作業を忘れず、末永くニッチな道を爆走していきたいと思います。
ヒラクさんありがとうございました!

ABOUT ME
etsuko-ichihara
メディアアーティスト。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web媒体、海外雑誌等、多様なメディアに取り上げられている。第20回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞、総務省異能vation(独創的な人特別枠)に採択。