アート

アルスエレクトロニカ初出展レポート④:FISでディープなディスカッション&授賞式

このレポートは、海外展示ビギナーの市原がメディアアートの祭典アルスエレクトロニカで初めての海外出展に奮闘していた日々をまとめた日記的なレポートです。半分自分のための思い出完全まとめ的な感じにつき、読みやすさや要約性などは犠牲にしておりますので、あしからず。。前回までの日記はこちら↓

設営初日〜2日目市原えつこのアルスエレクトロニカ初出展レポート①:展示設営編
設営最終日:アルスエレクトロニカ初出展レポート②:設営最終日編
フェスティバル初日:アルスエレクトロニカ初出展レポート③:オープニングで感情が乱高下

フェスティバル2日目金曜はイベントが盛りだくさん

アルスの来場者数は金曜日からじわじわ増え始め、土曜日にピークを迎えるそうです。
会場が賑わいを増してくる金曜日は、たくさんのイベントが開催されました。

FIS-Future Innovators Summitで世界中の参加者と意見交換

フェスティバル二日目は朝からアルスエレクトロニカと博報堂が共同開発している体験型ディスカッション・プログラム「FIS(Future Innovators Summit)」のDigital Communities Loungeにゲストアーティストとして参加していました。FISはアーティスト、デザイナー、科学者、技術者、起業家、哲学者など異なる背景・専門性を持ったイノベーターたちが世界中から集い、未来への問い「クリエイティブ・クエスチョン」を生み出す“生きるシンクタンク”とのこと(公式HPより)。

実はもともとこれ和田永さんが出るはずの枠だったのですが、和田さんがパフォーマンスのリハでパツパツになってしまったため、ピンチヒッターとして急遽私が出ることが決定しましたw
自分のほかのゲストアーティストにはInteractive Art+部門Awards of Distinction(準グランプリ)「Alter」開発者の池上高志先生、小川浩平先生がおり豪華。

Digital Communities部門審査員、田中和子さんがファシリテーション。英語ネイティブでめちゃかっこいい。

本日会場であるOKセンターの受賞展示では、受賞作品をまず遊覧し、アーティスト(私たち)に対して様々な「なぜ?」を問いかけ、「Future Humanity」「Future Diginity」「Future Sharing」という3つのテーマに沿って議論を深めていく、というワークショップの流れのようです。ハードル高え…!!
しかしさすが博報堂さん、しっかりネイティブの通訳人員を用意して下さり、まったく問題なくハードル高めのディスカッションや作品説明もディープにやれました(チッスチッス)

私の展示での作品説明はDigital Communities部門審査員である博報堂マーケターの田中和子さんが完璧に通訳してくださり、豪華な通訳すぎて逆にビビるなど。。
そういえば現場にこれまたDigital Communities部門の審査員Salahさんが柴犬ディボを連れてきてくれて和みました。

そのあとはワークショップテーブルについてディスカッション開始したのですが、参加者の皆さんがデジタルシャーマンに対して興味を持って様々な質問をどんどん投げかけてくれて嬉しい悲鳴でした。作品の外装やデザイン(なぜああいった形状にしたのか)、将来的なビジネスモデルはどうするのか、恒久的な存在にしないのはなぜか、日本的・東洋的なAI・ロボット観はどうなっているのか、などなどコンセプト、デザイン、ビジネスなど様々な切り口からの質問が雪崩のようにやってきて、本当にアンサーしがいがありました(そして完璧に即時通訳してくださった博報堂のFranさん、マジでマジでありがとうございました…!!大船に乗った気持ちでディスカッションできました)

展示オープン初日は文化圏が違う国での発表にやや怯んでいた気持ちもあったのですが、あっ、めちゃめちゃ趣旨や意図が伝わってる……!!とものすごく嬉しくなったし文化が違ってもちゃんと通じるんだ、と心強く思って感動した時間でした。このプログラム参加できてすごく良かった。

その後は和田永さんのパフォーマンスリハ(二度目)に突入。もうだいたい自分のパートの内容を覚え、後藤さんとともに本番楽しみっすね〜モードに。

「西欧でもちゃんと意図が通じるやんけ」と希望が湧いてきた

来場者も徐々に増えてきて、ランチから戻ったら藤井先生ロボットが美女に囲まれていました。

FISのディスカッションで、文化圏が違う人に対してもしっかり説明すればちゃんと作品の意図が通じることを確信し、
それと同時にちゃんとその文化圏にあわせて作品説明の仕方をマイナーチェンジすることの重要性にも気付き始め、お客さんへの説明の仕方や順序を工夫しはじめたら明らかに反応がよくなりました(なるほどね!感がお客さんに出てきた)

この日はあまり長く展示現場にいられなかったのですが(たぶん賞味1時間半ぐらい……)、その短い間にもポーランドのキュレーターの方からビエンナーレの打診をいただき、現場にいてラッキー。作家がちゃんと現場にいるほうが人脈やチャンスを回収できるという当たり前の事実に気が付き、フェスティバルピークの土曜日は絶対に現場に終日いようと決意しました。

メディアアートファンにはたまらない黄金コンビとの展示回覧ツアー

展示中、気分転換に地下に降りたらICCの畠中実さんとエキソニモのセンボーさんに遭遇。自分はアーティストである以前に一介のメディアアートファンなので(ICCも大好きだしエキソニモの作品大好き)、ちょっとこの組み合わせ(日本メディアアートのレジェンドたち)とアルスで会えるのはメディアアート好きにはたまらん状況すぎる……!!ということで彼らについて回らせていただきました。ミーハー上等。

RCA卒の上海のアーティスト、Biinちゃん(マメちゃん)は妙に親近感が湧いてスゲェ好きになりました(なんだかノリが似てる、自分の分身に出会った気分)

Gala(ゴールデンニカ授賞式)まで少し時間があったので、受賞展示会場であるOK CENTERの受賞展ではない方の別の現代美術企画展も観ようということに。「水」をテーマにした展覧会のようだったのですが、これが非常に良かった。映像、写真、インスタレーション、彫刻、様々な切り口から「水」を取り扱う作品が揃っていました。
ドイツ語圏ならではのドープな現代美術の香りがして、日本ではなかなか観られないような作品が揃っていて素晴らしかったです。

それにしても展示の規模がでかい。企画展のために、美術館のいたるところに巨大なオブジェが構成されていたりします。
展示を一通り見ると屋上に抜けるのですが、開放感が最高でした。リンツの街が一望できる。

美術館の屋上では、とんでもないところで子供たちがはしゃいでいてビビった。

子供たちが去った後に速攻でヤバい恐怖スポットに向かう畠中さんと、やや怯むセンボーさんと私。

日本人アーティスト、塩田千春さんの展示もありました。ド迫力。展覧会テーマにあわせ、船のインスタレーション。

OK CENTERは凄い美術館だと恐れ入る。そして現代美術の展覧会はやっぱり面白いなと感じました。
「メディアアートは、技術に寄りすぎて作品としての強度や作り込みが弱くなることはあるよね」と畠中さん談。がんばろう……。

Galaではビュッフェ飯が出てくるまでに時間があるそうなので、事前に軽く腹ごしらえ。飲み物の名前忘れたのですが、センボーさん一押しのブドウジュースとワインの狭間のような飲み物がめっちゃ美味かった……。ワインになる前、発酵しかけのブドウ液。写真を見ただけでヨダレが出そうです。シュワッと爽やかでグビグビいける。樽で飲みたい。

それにしてもアルスがこんなに楽しいフェスティバルだとは知らなかった。「またアルス来たいから新作制作頑張れそうです」という話をしたのですが、畠中さんやセンボーさんいわく、アーティストにとってのアルスの良い使い方はそういったモチベーション向上装置としての活用とのこと。
メディアアーティストにとって天国みたいに楽しい場所なので、「はよ来たい!!また来たい!!」みたいな感じになり制作のやる気が出るという。。イスラム教徒におけるメッカみたいな存在だなと思いました。

なお、センボーさんはエキソニモとしておよそ10年前にグランプリであるゴールデンニカを受賞し、おまけにニカ像をパフォーマンスに利用(キーボードをタイプするのにニカ像を活用)されててまじクールだと思いましたw自分もいつかそういうのをやってみたいものだ……。

ブルックナーハウスに向かう道中、やたら目立つ建物に出会う。「もしや、これがあのアルスエレクトロニカセンター…!?」と興奮していましたが別の美術館だそうでした(レントス美術館)。

ゴールデンニカ授賞式「Gala」

この日はブルックナーハウスで、アルスエレクトロニカフェスティバルのグランプリ授賞式にあたる一大イベント「Gala」が行われました。

リンツ市長なども出てきて厳かな雰囲気。(日本で入ってくるアルスの情報だとGala関連の絵面が多いので、アルス・エレクトロニカに厳かなイメージがついていたのかもしれない…)

今年のフェスティバルのハイライト映像が流れたのですが、へ〜〜っとボーッと観てたら自分の作品も出てきて驚きました(畠中さんと『出た…!』と驚いてた)。

Galaでは例年アーティストによるパフォーマンスがあるようで、昨年はやくしまるえつこさんの受賞パフォーマンスが話題になりましたが、

今年は和田永さんが後釜としてその役割を引き継いでいました。スゲェ…!!
ボーダーシャツのストライプ模様で音楽を演奏する「ボーダーシャツァイザー」のパフォーマンス。リンツ現地でスカウトされた人々と演奏を繰り広げていたのですが、これが本当に素晴らしくて、厳かな会場が一瞬で熱気と歓声に包まれました。

日本からは、藤堂さんの「SEER」も出演。

アーティストたちのパフォーマンスを経て、ニカ像の贈呈へ。皆さんおめでとうございます!!
Galaは参加しているとゴールデンニカがほしくなるヤバいイベントです。私もいつかグランプリを獲りたいものだ。。

全受賞者贈呈式&パーティー「Winners Salon」

ゴールデンニカ賞の贈賞はGalaで行われますが、それ以外の賞の贈賞式は同じブルックナーハウスの別会場にてもう少しカジュアルな「Winners Salon」として行われました。
アルスの総合芸術監督、ゲルフリートシュトッカーさんから手渡し&乾杯スタイル。細かいですが、巫女装束で行けば良かったな……と若干後悔している自分がおります。

なんだかんだでアルスから賞状もらえるのは嬉しいもので、後藤さんとともに他の受賞者とキャッキャはしゃいでました。Yassineと。

ロボットアーティストのSalah Petkusと。キャッキャッ

USのアーティスト、Kristineと。キャッキャッ

(自分の賞状、なんだか早々に曲がってるな…なぜ……)

アルス総合芸術監督のゲルフリート・シュトッカーさんともちゃっかり記念撮影。
実は今回の滞在中はシュトッカーさんとあまりしっかり話せず残念だったのですが、印象がこれまで漠然と先行していためちゃくちゃインテリなイメージだけでなく、愛に溢れたお母さんみたいな感じの方でびっくりしました。なんだか神話に出てくる神様っぽかった。

深夜になるとだいぶん人ははけていきましたが、豪勢な会場だなと改めて。Gala終了直後はこの広い会場が人でギュウギュウでした。

ほろよいで宿に戻る。夜のハウフトプラッツ(リンツ中央広場)はめっちゃ綺麗。

明日はいよいよフェスティバルで最も盛り上がり、動員も多い土曜日。パフォーマンスもある。
おっしゃ頑張るぞ〜、と気合をいれて就寝しました。

ABOUT ME
etsuko-ichihara
メディアアーティスト。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web媒体、海外雑誌等、多様なメディアに取り上げられている。第20回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞、総務省異能vation(独創的な人特別枠)に採択。
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