アート

「わたしと学生CG」なる記録を発掘した

評価員を担当しております「学生CGコンテスト(Campus Genius Contest)」アート部門のノミネート審査会が今年も終了しました。ノミネートされた皆さまおめでとうございます!!!!
今年ただでさえ良い作品が多かった激戦区で上位にきた精鋭たちなので、よくお名前を記憶いただくのをオススメします、セミプロみたいな人がひしめいており末恐ろしい……!!

ちなみに死ぬほど紛らわしいのですが、特にCG限定のコンテストではなく、デジタルアートを中心としつつジャンル不問・異業種格闘技のような学生向けコンテストです。(しつこく周知していきたい)
メディア・アートの世界では何気に最も歴史のある類の長寿コンテスト……

なお公開審査会の様子は恐ろしいことにYouTube LIVEでダダ漏れ&アーカイブも残っています。若い方が制作された良作がたくさん紹介されているのでよろしければご笑覧ください!
今後要チェックな作家さんがいすぎて末恐ろしい……(負けじと頑張らねばマジで)。

今年は3月にオンライン・ノミネート作品展イベント、そしてグランプリ等が決定する受賞作品の最終審査があるので、お楽しみにです。

そういえばこれまで自分自身がこのコンペに対してどんな関わりがあったか、と調べていたら、自分が24歳ぐらいの時に書いた文章が出てきました。
確か自分が前年の受賞者として、応募告知の配信に出ていた時にあわせて書いた文章が……。
受賞してからかなり時間が経っているため当時のフレッシュな気持ちを忘れかけており、せっかくなので晒してみます。
(当時の告知画像も発掘された、謎が深い)

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なぜ学生CGコンテストに応募したのか

学生CGコンテストのUST番組に参加させていただくことになったので、この機会に学生CGに関するあれこれを整理してみようと思います。
応募きっかけはきわめてミーハーで、過去受賞者の和田永さんのファンだったから。四方幸子さんが早稲田に講義にいらした時に存在を知り、ICCのHIVEにアーカイブされていたアーティストトークを見て「同世代でこんなに面白い&凄いものをつくっている人がいるのか!!」と衝撃を受けた。
熱に浮かされたようにどうすればあんな生き方ができるのか、とリサーチした結果、どうやら学生CGでの受賞をきっかけに活躍の幅を広げていたようだ、ということを知りました。単純なので「学生CGで賞をとれば和田さんの生き方に近づけるかもしれない!!」と思い込んでしまった大学生の自分(しかし今思えばそんなに外れた読みではなかった)。

▼和田永さんの作品「Open Reel Ensemble」。格好良すぎて涙出る。

で、実は受賞作品「セクハラ・インターフェース」を作り始めたころに一度応募して、惨敗している。当時は筐体のクオリティもかなり荒く、ペットボトルをきって、ミカン包む包装紙をつめて、100均で買ったペンケースに大根つっこんでた。作品のコンセプトもぜんぜん明確じゃなかったし、自信のなさをごまかすためにわざと専門用語を混ぜ込んで難しそうに書いていた感もある。自分達は文系学生だったし、美術教育も技術教育も受けてないし、正直無理だろうと思っていた。過去の受賞作品を見ていると、雲の上に見えた記憶がある。所詮セクハラだしねwみたいな(ただ、今みると応募映像が結構再生されてるな……)。

▼当時の応募映像

苦い思い出として封印したまま、大学を卒業。
その後、AR三兄弟の川田さんにお誘いいただき参加した「AR忘年会」、八谷和彦さんや江渡浩一郎さんにお誘いいただいた「ニコニコ学会」などのイベントでデバイスを発表する機会を何度かいただくことができた。
人前で見せるにあたり、デバイスを一気にブラッシュアップしたり、人前でコンセプトを面白く&わかりやすくプレゼンするために作品の文脈を整理していった。実機が本番でうまく動作しなかったときの保険のために、デモムービーの作成もした。わざわざお金を払って見に来てくれるお客さんを満足させるために、かなり必死にやり込んだ。気付けば、作品のクオリティも観た人の反応の良さも確実に上がった手応えがあった。
学生CGのことはすっかり忘れていたが、「あ、これもう一回出せば結構良い線いくかも」と思いついた。応募締め切り4日前のこと。

時間はなかったが、イベントでプレゼンを繰り返す中でコンセプトが洗練&深堀されていったため、記述は非常に楽だった。前回応募時は小難しい分かり辛い文章にしてしまったが、今回は「これを100人の前でプレゼンして伝わるか?」を意識しながらわかりやすい記述を心がけた。
応募時に出した映像も、「コンペ用」というよりは、イベントでお客さんが笑って、楽しんでくれることを目的につくったもの。コンペ向け映像は結局つくらなかったが(つくる時間もなかった)、それがかえってよかった気もする。

応募して得たもの

受賞してからのことについても書きたいと思います。いろいろありますが、その中でも、特に個人的によかったことをピックアップ。

審査員、評価員の方々のコメント

前にも書いたように、自分達は芸術系でも理系でもなく文学部の学生で、大学の流れからドロップアウトして野良犬のように妄想を形作っていた(大学にものをつくるスペースもないから学食に集まって開発してた)。周りに何かつくっている人もおらず、自分達のポジションを客観的に観れるような場もあまりなかった。自分達がやっていることがアートなのかネタなのかも正直わかってなかったと思う。そんな中で、審査員や評価員の方々のコメントによって、自分達の強みを客観的に知ることができたのは非常にありがたい機会だった。
特に、表彰式で木村了子さんがおっしゃっていた「突き抜けた明るさやバカバカしさ、あっけらかんとした表現がとても良いと思った」という言葉に救われた。
自分はいわゆる芸術系、アート系の人たちが持っているようなシリアス&シニカル&抽象的で洗練された表現ができるような素養がなく、長いことそれがコンプレックスだったのだが、これはこれで良いんだ!!と思えるようになった。これだけバカバカしく、くだらない表現さえも認めてもらえたのがとても嬉しかった。
また、評価員の渡邉さんが下さったコメントも、自分達が言いたかったことをズバリ言い得ていて、こんなにわかってくれるなんて!!と感動した。作品のコンセプトを、自分達が応募シートに書いた以上に正確に言語化して頂けて、真摯に作品に向かって頂けたことが嬉しかった。

展示や受賞パーティーでの出会い

これまでどんな場に登壇しても自分が最年少であることが多く、それゆれの甘えも正直生まれていた。
が、学生CGで同世代や年下世代の凄いものをつくっているクリエーターと接触することができ、良い意味での焦りと、刺激をもらうことができた。活躍に年齢は関係ないんだな、とも。
受賞展会期中はたくさんの受賞作家やノミネート作家のみなさんとお話することができ、多種多様な才能を目の前にしてとてもワクワクした。多幸感に溢れた時間だった記憶がある。
また、KAI-YOUの武田さんと出会えたことも大きかった。初めてお会いしたのが学生CG授賞式だったのだけど、その後も大変お世話になることになった。非常に良質な長文インタビューを書いて頂いてバズったり(いまだに自己紹介がわりに使わせて頂いている)、イベントに登壇したり新作をつくるたびに記事に取り上げて頂けたりと頭が上がらない。。信頼できる編集者さんと出会えることほどありがたいことはないなと思った。今年は評価員をやられるとのことで、武田さんがどんな作品を見いだしてくれるのか個人的にとても楽しみ。

知名度が突然上がった、バズった

かなり長く活動しているにも関わらず(3年ぐらい)受賞の一ヶ月後ぐらいから突然インターネット上でバズが生まれた。国内だけではなく海外のwebメディアにも多数掲載され、YouTubeの再生数が24万をはじき出した。その流れで、民放テレビに出演したりイギリスのテレビに映像が放映されたりした。まさか八代亜紀さんが喘ぐ大根を撫でてくれるとは思わなかった。

オファーの増加

詳しく言えないことも多いが、オファーが色々と舞い込んでくるようになった。今までは知り合いベースで話がくることが多かったが、受賞後はどこから聞きつけたのか、知らない方から突然メールが飛んでくるケースが多々。
アート、広告、お笑い、研究など様々な分野からのお話があり、非常に刺激的な時間を過ごせた。取材依頼も増えた。最近は理研の藤井先生のチームと一緒に取り組んでいるSRxSIの制作をじわじわ進めたり、シブカル祭に向けて準備をしています。

賞をとってもとらなくても正直何も変わらないようなコンペもあるけれど、
学生CGは受賞することでその後の制作活動が一変するぐらいのインパクトがあるコンペだと思います。各業界からの注目度も高く、若手クリエーターを探しているキュレーターやオーガナイザーがかなり入念にチェックしている気がする。審査員賞でこれぐらい色々いいことがあったのだから、いわんや最優秀賞をや。
エントリーフィーもかからないし、応募はかなり手軽だし(紹介映像はURLだけで提出できる!)、出してみて損をすることは絶対にないのでぜひ応募してみることをおすすめします。
たとえ落ちてしまっても、コンペに出すことは自分の作品を整理してコンセプトを言語化してパッケージングする作業なので必ず自分のプラスになるし、その後の自分の成長を実感するためのマイルストーンになると思います。

いったんしめますが、明日のUSTでまた色々お話できればと。
詳細はこちら
配信URLはこちら
どうぞよろしくお願いします。

配信:http://www.ustream.tv/channel/dep-art-ure
第19回学生CGコンテスト応募締切カウントダウン!応募状況をリアルタイムに配信します!
日時:2013年9月17日(火)18:00~19:30出演(順不同・敬称略):
▽審査員
原田大三郎(審査員長/映像作家)、四方幸子(キュレーター)、
高須正和(チームラボ/ニコニコ学会β)
▽評価員
谷口暁彦(作家)、武田俊(ディレクター/KAI-YOU)、
小村一生(プロデューサー/ワンオアエイト)
▽受賞者
渡井大己・市原えつこ 『セクハラ・インターフェース』第18回審査員賞

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ABOUT ME
etsuko-ichihara
メディアアーティスト。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web媒体、海外雑誌等、多様なメディアに取り上げられている。第20回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞、総務省異能vation(独創的な人特別枠)に採択。
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