アート

アルスエレクトロニカ、2度目の出展レポート①出発前トラブル〜到着初日のドタバタ編

世界最高峰のメディアアートの祭典、アルスエレクトロニカ。
昨年はアルスエレクトロニカ賞の受賞者として初めての海外展示をさせていただいた非常に思い出深いフェスティバルなのですが、今年も別の作品で展示のお誘いをいただき、現地に渡航し展示をしてきました。

……が!!!今年は様々なトラブルに出発前からぶち当たりまして、なかなか大変な渡航でした。今ではいい思い出ではあるので、今年もブログにまとめてみます。

渡航予定の日、まさかの痛恨の事実が判明

どうにか作品や次回作の告知ツール、旅荷物などをパッキングし、渡航当日。
そういえば去年は、パスポートを地元のコンビニでコピーしたあと、そこに置き忘れて、成田空港に向かうバスが出発する直前に気づいたりしてめっっちゃ焦ったな……とふと思い出しました。

今年は絶対にああいうことがないように気をつけよう!と改めてパスポートを取り出して眺めたところで、目を疑う表記が……

「パスポートの有効期限:2019/8/12」

………ん!!??????????????????(今日は2019/9/2)

 

ぎゃあああああああああああああああああああああ!?????????????

 

さすがに血の気が引いて自宅で叫びましたよね……。去年よりヤバイやつやん。
とりあえずSNSに緊急事態発生!!とポストして情報を集めつつ、どこから手を付けたものか途方に暮れつつ、2日後に出発すればギリギリフェスティバルの開幕に間に合うことをSkyScannerで確認。
ひとまずパスポートセンターに問い合わせてみたところ、はじめは「その期間では無理です、残念ですね……」と門前払いだったのですが、
出張の趣旨や自分の経歴などを軽く話すと「それなら話が変わってきます。今回は国と国とが関わってくる公的な出張であるため、緊急再発給ができるかも」と風向きが変わってきて、すかさず「絶対にいかないとまずいんです、国としての信用問題ですし、現地でも既にプログラムが公開されていて、色々と公的機関の方とアポをとっていて……」と猛アピール。
最終的にパスポートセンターの方が「わかりました、こちらも頑張ってみます。いろいろ準備物は多いですが、一緒に頑張りましょう」と全面協力モードに。神……!!!

細かい対応内容はおそらく有料コンテンツwにまとめるのですが、とにかくいろいろと各所に電話をかけまくったり、資料を印刷しまくりFAXしまくったり、東京都知事に「こういった理由で絶対に行きたいのです」という願い書を出したりし、一通りの手続きをどうにかコンプリート。この日は今年一番ハードな日だった気がする……。

9/2に問い合わせて、9/4の正午にどうにか新しいパスポートをゲットしました。
そして、その日の21時の便でウィーン空港へ。まじでギリギリ……!!!(パスポート発給のときに、『今日出発なんですねww』と職員さんに苦笑いされまくった)

さて、手続きが終了してから出発まで、次こそは絶対にミスれないのでいろいろ全力確認していたのですが、俺、チャイナエアラインとエアチャイナが別物であることに気付く。はうあ!!!
昨年OK CENTERのスタッフが手配してくれたのがチャイナエアラインで、非常に快適でいい思い出しかなかったので今年もこれでいこ〜、と思っていたのですが
よくよく調べると、別もんやんか……!!(台湾系のチャイナエアラインと中国のエアチャイナ。そして、エアチャイナが色々悪名高い航空会社であることも知る。大丈夫かな……)
幸い、手荷物などの規定はチャイナエアラインとエアチャイナはあまり変わらないことが分かって、一安心(不安すぎてわざわざコールセンターに確認してしまった)。

また、昨年に引き続き和田永さんのパフォーマンスに今年も参加する予定だったのですが……(以下、昨年の様子)

なんと今年の和田さんのパフォーマンスは到着初日夜。「すみません、パスポートが期限切れで到着が当日になり、十分にリハの時間がとれないのですが大丈夫でしょうか?」と連絡したところ
「ぐわーヤバすぎるーーー!!!なんという悪夢!当日着とはなかなかのハードスケジュール・・!無理せず・・とは言いたいものの、これはJOIN頂くのがある種の伝説になる気がしましたw
そう言われると「おっしゃ、それじゃ伝説をつくりにいきます!!」と引き続き参加の方向に。和田さんは人のモチベーションを上げるのが本当にうまいです。

いざ、今度こそ出国

無事に手荷物検査などを終え(ドローンも問題なくてよかった)、日本からのメールに爆速返信し、出発ゲート前でホッと一息ついていたら「もしかしてこれからウィーンに向かいますか?」とメッセージが。
なんと、「Alive painting」で世界中で大活躍の同い年のアーティスト、中山晃子ちゃんが同じ便だったみたいで、顔を上げると目の前に!!

直接あうのは数年ぶり、久しぶりなので超嬉しかったです。出発までのひとときや、北京での厄介なトランジットを一緒に乗り越えつつ、他愛もない話をして和みました。彼女は今回、アルスの一大イベントBIG CONCERT NIGHTで「Alive painting」のパフォーマンスをするそうで、そんな大舞台を目の前にリラックスしてるのがまじでスゲ〜と感心。私だったらめっちゃピリピリしますわ。

トランジットの北京空港で晃子ちゃんと解散したあと時間ができたので、「いま北京です。いまのところ無事に向かってますよ〜」と和田さんチームに連絡。すると……

そうだ、、エアチャイナはロスバゲ多いと有名なのだった、、、
預け入れ手荷物にも結構大事なものが入っているので不安になりつつ、みんなで祈りつつ次のウィーン行きの便へ乗り込みました。

快適に過ごすための知見のおかげでTHE・快眠

北京ーウィーン間の移動がもっとも長いのですが、フェスティバルに到着した当日は朝から晩まで猛烈に働くことがもうわかっていたので、とにかく疲れを残さないように事前に情報収集しました。こちらのツイートへのレス、かなり良い情報を提供いただいているのでご参考まで。

すげぇ良かったのが、こちらのフットレスト。確かに足の不快感が普通に足を置くのに比べ段違いに楽になりました。

というわけで、ぐっすり眠ったり、現地での動きをシミュレーションしたりしている間に、あっという間にウィーン空港へ。

DAY1:朝から晩まで各所を駆け回る、怒涛の1日

正午:会場着し爆速設営

順調に乗り継ぎをし、税関でカルネの手続きをし、OBBに乗り込み……。無事に予定通り会場に到着。心配していたロストバゲージや大幅な遅延もなく、スムーズに会場にたどり着くことができてまずは一安心。

しかしホテルに荷物を置きにいく時間的な余裕がなく、ゼエゼエしながら大荷物をかかえてPOSTCITYのエントランスに向かう。駅のスーパーで買ったレッドブルがパンパンのリュックから飛び降り自殺、会場前でレッドブルの噴水がキラキラ輝いている様子を呆然と眺めていたところ、、
日本の知り合いの皆さんが「おお!!市原さん結局無事に着けたんですね!!だめかもと心配してました、おめでとうございます」と言いながら荷物運びを手伝っていただいて本当にたすかりました涙 博報堂の高橋さん、ArtHackDayの青木さん、文化庁の細谷さん、ありがとうございます、、
荷物が多すぎて、「アルスに変な登山家がいると思ったら市原さんだった」と言われるレベル。ほんとすんません。

本来、プロデューサーのVeronikaとエントランスで待ち合わせをするはずが、見つからない。「彼女、徹夜あけのボロボロで今やばいかも」との情報を得たので、文化庁の細谷さんに代理のアーティストパスをもらい、日本人作家の後藤さんが展示現場まで案内してくれ、現地についたら爆速で開封&コスチュームのセットアップ。
自分の展示横のバックヤードで作業していたのですが、もう開幕してることもありいろんな人が展示かパフォーマンスか何かやってるのでは?とひょこひょこ覗きにくるのが面白かったです。目が合うとみんなニヤッとしていく。「ごめん、ここ展示じゃなくてバックヤードなんですわ」と言ったら、「これは僕にとっては観る価値のある展示だったよ!」と親指グッ。笑ったw

一通りモノを開封できたので、試運転的に会場をふらっと歩いてみたら、やたら熱心に写真を撮ってくれるスキンヘッドのフォトグラファーさんがいて、終始ナマハゲ(私)を追ってくれました。
誰だろと思ったら、なんとアルスの公式フォトグラファーvog.photoさんだった。彼の写真好きなのでラッキー!

ナマハゲマスクがカメラマン的に燃える素材だったのか、パフォーマンス試運転が終わってからも個人的に私の写真を取りにきてくださりました。薄暗い雰囲気でお気に入り。

日本から、ナマハゲのお手伝いも兼ねて遊びに来てくれたナマハゲ制作時のコアメンバーだった川内さんとも合流。
あれよあれよとしているうちに最初のパフォーマンスタイム(14:15)がやってきたので、川内さんにナマハゲの頭部ドローンの使い方をティーチングしようと思ったら、突然ドローンのコントローラーがぶっ壊れる。まーーーじーーかーーーー!!
とりあえずドローンなしで会場を闊歩してこの回は終わりました。

同じフロアで展示されてるスプツニ子さんが見に来てくれた!映像面白いねと褒めていただけて光栄、、

あと、冷静に展示空間を観ると、映像ディスプレイとパネルという最小限の要素しかなくて簡素すぎる。もう一声ほしい……せめてマスクだけでも展示したいから、マネキンと台座もらえないかな?とスタッフに言うと、すぐにスタッフ用のチャットに要望を投げ込んでくれた。
その結果、台座はすぐに調達してもらえたが、マネキンはないわ、ごめん、とのこと。ぐぬぬ……。
マネキンはホームセンターのBAUHOUSEに、ドローンはリンツにMedia Markt やSATURNという電気屋があるから、多分そこに売ってると思う。と情報をゲット。この日はちょっと厳しいが、明日以降なる早で行くことに。

その後、屋外ステージでリハしている和田さんチームに顔見せに。「無事に到着しましたよ!!!!今晩のパフォーマンス出られます、いえーーーーーーい!!!!!!」と喜びを分かち合って奇妙な踊りをおどる(そして不審者が爆誕、後ろのセキュリティがドン引き)。

その後アーティストパスを取りにAccreradation Deskに並んでいたのですが、なぜか長蛇の行列に中山晃子ちゃんが連れ添ってくれて、「え、あっこちゃん明日パフォーマンス本番だよね!?忙しくないの!?」と逆に自分がビビったのですが「大丈夫大丈夫、こういう時ぐらいじゃないとなかなかえっちゃんと話せないから」と言ってくれて嬉しかった。肝がすわってるな……。
彼女とたまたま会ったのは数年前で、実はわたしは彼女が学生の頃からいまの活動をしているのを知っていたので、同い年の貴重な作家としてSNSで活躍をみつつ存在が励みになっていたので(お互い忙しくてなかなか会えないが、、、)異国でいろいろ話せてすごく楽しかったです。いつか投下しようと思ってたとっておきの爆弾ネタもこの機会に投下し、「まじかーー!!」「おもろいじゃろ」と2人でゲラゲラ笑ってた(ここでは言えない話)。

跳躍するあっこちゃん(何気にめちゃくちゃ運動神経が良い、NINJA……)

その後は「無事に初回のパフォーマンスに穴を開けずにすみましたな、ガッハッハ」と川内さんと酒を飲みに。たまたま明和電機の土佐社長やシンデレラテクノロジー研究者の久保さんも一緒で不思議な会でした。

そして初日2回目のパフォーマンス。初年度のアルスや北京でのエキスポート展示でお世話になったアルス広報のVanessaがたまたま現場にいて、「久しぶり!あなたは一年見ないうちにすごく変わったわね!」と言われて笑った。

ヨーロッパの子供を怖がらせるなどしました。

ドイツのラジオ局ディレクターの方がパフォーマンス(徘徊?)を見てくれて、その後インタビューしてもらいました。
「伝統と現代的なテクノロジーを融合させること」についてかなり本質的な質問をたくさん投げかけてくれて、「こんなに伝わるものなのか!!!」とすごく嬉しくなった。あと一年前のアルスでは、通訳いないと取材に応えられなかったので、しどろもどろながらも自力でインタビューに対応できたのが、ちょっとだけ進歩を感じました。このディレクターさんとはすごく気があって、また会おうね!!!絶対にね!!と惜しみつつ別れた。

夕方:POSTCITYを脱出、宿へ

さて、本日のパフォーマンスタイムを終えたので宿に急いでむかい、荷物をようやく置きに行く。
駅でICCの畠中さんにばったり出会い、宿の方向も近かったので一緒にトラムでアルスセンター付近まで移動。今年はアルス40周年で、日本のキーパーソンたちによるシンポジウムがあるそうで、そのために招聘されたようです。畠中さんと別れてからは宿にチェックイン。学生寮みたいな部屋だけど、居心地良さそうだったしスタッフのお姉さんも親切だった。

ちょうど部屋をでるとき、ふたつ離れた部屋の美人なお姉さんが、私が鍵を締めやすいようにわざわざ廊下の電気をつけてくれて優しい。
エレベーターに乗ると、「あなたもアーティスト?これからPOSTCITYにタクシー手配してるから、一緒に乗っていかない?」と声をかけてもらう。め、女神……!!!その後すぐに和田永さんたちのパフォーマンスのリハに行かないといけなかったので、めちゃくちゃ助かりました。
彼女の名前はJohanna Guerreiroさん、フランスの女性でAdrien M & Claire Bという会社を代表してきているとのこと。アルスセンターで常設展をしているらしく、すごいじゃん!となる。後日アルスセンターの展示「Mirrage and Miracles」を訪れたのですが、非常に優美なARの作品で感動しました。


彼女のおかげでスムーズにPOSTCITYに戻れて本当に助かりました。

夜:オープニングイベント、「Ars Electronica Special」で和田永さんパフォーマンスにてセッション

その後はアルスエレクトロニカのオープニング、40周年を記念する和田永さんの特別電磁パフォーマンスに、会場が一体になる「通電の儀」通電役として明和電機の土佐さん、後藤映則さんと乱入出演しました。

本番前の乱入組の記念撮影が、まるで能力者集団で笑う。

前半はリンツの地元アーティストStefanさんとのソリッドなノイズパフォーマンス、後半は日本のアーティスト友情乱入しつつの突然の日本の祭り感まるだしの儀式で、超楽しかったです。
相変わらずすごい盛り上がりでさすがでした。到着日の夜でかなりグロッキーになってたけど出演間に合ってよかった!

Photo: 水落大

昨年の受賞展示でお隣だった、LAのロボットアーティストSarah Petkusとも再会できてすごく嬉しかった。相変わらずクレイジーなプロジェクトを新作として出していて、彼女は最高や〜〜

しかしその後はヤバイぐらいに疲れすぎて、眠くて、腹が減りすぎて、、、なんだかもう人に会ってもネガティブな気持ちにしかならない感じだったので、その後に遊びにいこうと思っていたシークレットガラを待たず帰宅。「つらい……ねむい……ひもじい……」と遠い目でぼやいていたら見かねて後藤さんがパンを恵んでくれてありがたい(優しい)。そういえば今日はろくに飯を食う暇がなかった……。

リンツのトラム乗り場に到着したら、去年アルスのEXPORT展で北京で展示した時に現地ですごくお世話になったHyundaiのアート事業担当者のTaiyun Kimさんとばったり再会して嬉しかった。「今は日韓関係が難しいけど、人と人としては引き続き仲良くしましょうね、また日本の作家の作品を展示できるように頑張ります」とのこと。

そしてボロボロになりながら満身創痍で宿についたら、なんとエントランスでロボットアーティストの藤堂さんに遭遇。アルスは本当にいろんな人とばったり出会う。いやーもう今日大変でしたよ、、と話してたら自販機でチョコを恵んでくれたw藤堂さんと前にあったのは一年前のアルスだったので、同じ国の作家でも外国じゃないとなかなか会えないあるあるに笑った。久しぶりに色々話ができて楽しかったです。「作品が有名になったし、いろんな欧米の美女たちが話しかけてくれるようになったけど、相変わらず彼女できない」というぼやきに「これぞ、藤堂さん」と感動した。

喉が乾いたので自販機で水を買おうとしたらあれ?財布が!!ない!!と慌て、もう少し話をしたかったけど引き上げる。
その後、普通に部屋にあるのを発見して笑う。

その後は安心してスカーッと寝落ち。初日から大変でした。
しかし当時はめちゃくちゃ身体がしんどくてそれどころじゃなかったですが、今思えば充実した1日だったな……。

ABOUT ME
etsuko-ichihara
メディアアーティスト。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web媒体、海外雑誌等、多様なメディアに取り上げられている。第20回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞、総務省異能vation(独創的な人特別枠)に採択。
こんな記事もおすすめ