アート

アルスエレクトロニカ2019出展レポート②物品調達クエスト&各種イベント編

世界最高峰のメディアアートの祭典、アルスエレクトロニカ。
昨年はアルスエレクトロニカ賞の受賞者として初めての海外展示をさせていただいた非常に思い出深いフェスティバルなのですが、今年も別の作品で展示のお誘いをいただき、現地に渡航し展示をしてきました。ただし2年目はトラブル続きで超ドタバタ、前回に続いて現地での日記的なレポートを公開してみます。

前回の1日目:

アルスエレクトロニカ、2度目の出展レポート①出発前トラブル〜到着初日のドタバタ編世界最高峰のメディアアートの祭典、アルスエレクトロニカ。 昨年はアルスエレクトロニカ賞の受賞者として初めての海外展示をさせていただいた...

DAY2:物品調達に奔走

現地入り2日目。とっくにフェスティバルはオープンしているのですが、まだまだ調整しなければならないことが山積み。そして昼にはスロベニアのフェスティバル・ディレクターとの打ち合わせのアポ。

この日は1日目に調達できなかったものを買い求めに朝から奔走。しかし1日目の移動・設営やパフォーマンスの疲れなのか謎に脚が筋肉痛で、、痛い、、、


リンツのホームセンターBAUHAUS(微妙に遠い)まで歩いて向かうが、店内をたらい回しになった後、ヘッドマネキン置いていないと発覚。仕方ないので代替になりそうな材料を買い集めました。思ったより高くついてしまった……

あーチキショー、と思いつつ電気屋SATURNまで向かっている最中、小規模なおもちゃ屋さんを発見。「意外とこういうところにあるんでは?」と思って入ったらビンゴ。実寸の骸骨の模型があったので、これをヘッドマネキン代わりにつかうことに。5€、、、いい買い物すぎた。

SATURNまでまだまだ遠い……しかしもう歩けない、足が痛い、、しかもこのままだと次の打ち合わせに間に合わないじゃん、、と焦っていたその時。

「LIME」と書かれた電動スクーターがふと目に入りました。これしかねえ!使ったことないけど、意を決してアプリインストール。クレカ登録したらすぐに使えた。

使ってみたら超ビンゴ。移動がかなり楽に。はじめは怖すぎてへっぴり腰になっていたが、すぐに慣れてリンツ市内をピュッと移動できるようになりました。
しかしお目当てのSATURNに行くも、探していたスペックのドローンが見つからない。そうこうしているうちにどんどん打ち合わせ時間が近くなってきてしまったので、一旦今日は諦めて引き上げ。

急いで和田さんブースに預かってもらってた作品類を回収し、打ち合わせの待ち合わせ場所・POSTCITYのエントランスへダッシュ。
スロベニアのMasa Jasbec(昨年のアルス審査員)、ずっと細かい調整でやり取りしていたBogdanと短いミーティング。やや緊張しながら向かったけれど、すごくフレンドリーで温かい方々で、そして自分の作品を面白く見せるためにすごく真摯に取り組んでくれて、なんだか話していると元気とやる気が出ました。彼らと仕事ができるのが改めて楽しみになりました。がんばろう、、。

自分の展示スペースに戻り、入手したドクロにマスクを着せていたら日本人作家の後藤映則さんがやってきたので、彼の展示を見に移動。地下最深部のBunkerはめちゃくちゃ広くて迷子になるのでようやくわたしたちの参加エキシビションHuman LimitationsやGellary Spaceの作品全貌をみれました。後藤さんのゾートロープ作品はいつもながらめっちゃ良かった。世界中の都市を歩いている人のシルエットを今回はモチーフにしたらしいです。いや本当に安定感のあるクオリティだよなあ……(チクショー)。

その隣のストロボ作品もすごく面白かったです(対岸にいる2人の容姿が融合されていく作品、、、表現が難しいw)

そして後藤さんと飯を食ってたら気づけばパフォーマンスタイム近し。「パフォーマンス待ってる人が集まってますよ」と川内さんから連絡を頂いたので、急いで向かいました。しかしこの時は威嚇用のドローンが故障していたため、手持ち無沙汰でナマハゲのフリーハグ状態にw謎が深い……

しかし展示映像を熱心にみてくれてる人が多くて嬉しかったです。

この日のパフォーマンスを終える頃にはちょっと身体がボロボロでガタが来て、ゾンビになりながら会場を出ました。体中が筋肉痛でめちゃくちゃ痛いし、なぜか足の指先からめっちゃ血が出ている、、、
疲労と痛みでゾンビ化しながら会場を脱出しているところで同世代作家の岸さんと遭遇し、あまりにも私が死にかけているので「大丈夫!?」とびっくりされる。
ホテル近くのオーガニックスーパーでオレンジジュースとグミだけ買って、部屋で死亡。この時は本当に心身ともにボロボロで一番きつかったです。とりあえず睡眠が必要で、泥のように眠りました。

この日は夜に博報堂の方が引率する日本企業の方々との交流会があったが、博報堂の大家さんに「すみません、超行きたかったのですが、体力がヤバくていけないかもです、、、」と連絡。
が、一眠りし起きてからしばらくすると「酒飲みたい!!!!」「イエア!!!!」「華金!!!!」という酒飲みモードが猛烈にやってきたので、「すんませんやっぱり飲みに行きます!!」と大家さんに連絡し、電動スクーターをかっとばして会場に移動。もう深夜でしたが、ヒャッハーーー酒ーーー!!!と異様に高いテンションで飲み会会場に突入。

バンダイナムコの方や、資生堂、博報堂、とそうそうたる日本企業の方々が集まっていて楽しかったです。異国にきて日本人と喋ってるのって……感は若干ありつつも、本当に疲れている時はこのホームなノリが本当にありがたい、、そして酒がうまくてガブガブ飲む。ご飯はなくなってましたが……。

会場にはアルス日本部門代表の小川ヒデさんもいらしており、交流会終了後は私含め同世代の日本人作家3人(後藤映則さん、Ryo Kishiさん)と二次会的に少人数で飲みに。

リンツ芸大の卒業生がやってるパブを案内いただき、そこが居心地良いし話も楽しいし、ゲラゲラ笑っている間に気づけば深夜2時になっていたので解散。小川ヒデさんの、「僕らは会うとバクテリアを交換しあうからなるべく良質なバクテリアを貰った方が良い。アルスに世界中から人が集まるのは、きっと面白いバクテリアをみんな求めにきてるんだと思う」というお話に超納得しました。そして、「今の日本の30代アーティストはゴールデンメンバーが集まってるし、自分ならではのオリジナルな原液を生み出してる」とヒデさんに太鼓判押してもらえたので嬉しかったです。それぞれみんな作風芸風違うのですが、切磋琢磨しながら頑張っていきたい。
しかしこの日はまともにごはん食べずに酒ばっか飲んでた……。不摂生極まりない……

DAY3:ドープなお客さんたちと出会う

ドローン調達をあきらめきれず、Media Marktなる家電量販店に行ってみることに。街のはずれにあるので、再びLIMEでビューン。だいぶん慣れてきて、むしろ快感になってきました。

しかし店員さんいわく「ごめん、それオンラインショップにしかない」とのこと。ガーン。

しかし電動スクーターにハマった俺、もはやLIME散歩の様相でどこか楽しめました。天候が悪くて雨に打たれてるのもなんだかフジロック的な楽しさがあり、「あはははははは」と笑いながら雨に打たれスクーターをぶっ飛ばす不気味な東洋人女性が爆誕。そういえばリンツについてから2日間酒以外はろくなものを食べておらず、空腹がやばい&アジアの発酵食品たべたさがやばかったため、OK CENTER近くのアジア料理バイキングへ突入。み、味噌汁〜〜〜!!!!

あまりにも美味そうに食うからか、店員の中国系のおばちゃんが親身に世話を焼いてくれました。ほっこり。

腹ごしらえしたところで、昨年の受賞展で展示したOK CENTERも近くにあったので駆け込みました。私がはじめて海外展示したのがここだったので、すごく懐かしい気持ちになる、思い出深い、大好きな建物。

今年の受賞展もめっっちゃ面白い!さすがは受賞作品なだけありました。あとOK CENTERはテクニカルスタッフがしっかりついてくれるから、ちゃんと美術展としてしっかりしてて、いいな……と羨望の眼差し。(去年はこんなにモノ探しに奮闘することなく、超楽だった……)。
今年は新設のライフアート部門ができているので、バイオアート系のプロジェクトが充実。詳しい解説まではこの日は読めなかったのですが、そもそもの什器設計や展示設計の質が高くて参考になりました。

SATURNで再び店員さんに問い合わせたところ、自分が予想してなかったおもちゃコーナーみたいなところにドローンがあったらしく、狙っていたドローンをようやく現地調達、その名もDEMON!最高!

喜び勇んで会場へ向かい、ドローンを組み立て使い方を習得しました。「ドローン調達できたよ!!イエーイありがとう!!」と教えてくれたスタッフに御礼。DEMON、結構激しく回転するので凶悪さが強い。

バックヤードを出るとスロベキアのお客さんが展示を見てくれてて、なんかやたら気が合うな、あと多分この人ただもんじゃない(職人肌のオーラが出てる)と思い「もしかしてアーティスト?」と聞いたらなんと昨年のメ芸の受賞者とのこと!しかも私と同じ受賞部門(エンタメ部門)。この人面白そうと思ったのでコンタクトを交換。名前はAndrej、vvvv使いのVRアーティストでした。

この日のパフォーマンスを大学ゼミの8期下のやたらデキる後輩、曹くんが見に来てくれてるのを発見。コンサルティング会社勤めだがアルスには視察できたらしく……。
彼の顔をみた瞬間にピンときて、「ちょっと、ナマハゲから逃げる役これからやってくれないかな」と頼んだら快諾してくれました。

で、パフォーマンス開始。曹くんの演技力がやたらクオリティ高く、マジで怯えながら会場を全力疾走してくれたので追いかけがいありましたwww
しかも追われる側視点の動画まで撮ってくれて、なんとデキる子なんだ、、、、しかし曹くんの足が早すぎて結局最後まで捕まえられませんでした笑。しかし普通にナマハゲ単体でのんびり徘徊しているより、追われる役をつくったほうが注目度があがって評判よくなった手応えが。

その後、Pressできていたカナダ人のジャーナリスト・キュレーターのErikがいたくパフォーマンスや作品を気にってくれて嬉しかった。彼はアーティストでもあり、原宿のラフォーレミュージアムでも展示してたらしい。えええすげえじゃんwwwそして私のことは「ミス・オニババ」と呼んでくれます。

パフォーマンスするとやっぱり展示空間に活気が出る気がしました。このときいろんなアーティストと仲良くなれた。ベルリンのManuel Tossiは、彼も伝統や儀式とテクノロジーを組み合わせて作品をつくってるらしく共感してくれました。

そしてモンスターのようなオブジェクトを使ったパフォーマンスをしているユニット、Punch Agatheのお二人とも、化け物つながりでめっちゃシンパシー感じて仲良くなった。すごくキュートな人たちで会えて嬉しかったな、、

そしてAndrejがメッセージを送ってくれているのを発見。「明日、あのナマハゲのマスクを3Dスキャンしたいんだけどどう?」とのこと。彼の作品「DUST」をチェックし、めっちゃエレガントで好きだったので二つ返事で承諾。

さて、このあとどうしようかなとノープラン。会場ぶらぶらしてると再びさっきのErikに遭遇し、POSTCITYの入り口まで一緒に戻る。

もっかいOK CENTERでもみるかな~と思ってましたが、ICCの畠中さん指吸さんと遭遇し、「AI MUSIC面白かったよ、会場へもシャトルバス出てる」と伺ったので、一服お茶したあと教会でAI MUSICのパフォーマンスを観に行くことに。会場がめちゃくちゃ荘厳、「こ、これはドラクエワールド……!!!」と感動。

演奏の最中に、オランダのキュレーターのViolaから「あなたはもしかしてこのホールにいる?」と連絡。前にしばしやり取りをしていて連絡が途切れてしまっていたのですが、あの話まだ終わってなかったのか!急いで階下の集合場所に移動。

Violaと初対面。長身でかっこいい、そして作品へのマニアックな愛に溢れた女性で、「あ、この人は信頼できるな」と直感的にわかりました。喋り方にオタクっぽさがあるのも親近感。名刺でもらった彼女のセレクションもセンスが良い。
具体的な展示プランを提案いただき、それは自分のスケジュールにも合致したのでまったくノープロブレム。一瞬で話がまとまって「やりましょう」となりました。今年のGWにFacebookメッセンジャーでダラダラやり取りしてまとまらなかったのが、たったの10分でまとまったので、やはり実際に会うのってすごく大事なんだなと実感。ということで来月オランダの展覧会に参加します(直近w)。

そしてトリの渋谷慶一郎さんのパフォーマンスが予想外の方向性で最高だった。荘厳な教会で、まさかお坊さん出てくるとは誰も予想してなかったwwwwしかしめちゃくちゃかっこよかった。

会場でたところで中国の大好きなアーティスト&キュレーターのBiinちゃんに遭遇。もう深夜でみんな疲れてたんだけど、遭遇した瞬間にお互いなんだかめっちゃテンションがぶちあがり、帰りのバスではBiinちゃん、後藤さんでくだらない話でゲラゲラ笑ってました。バスで東洋人たちが騒いでて申し訳ない… そしてBiinちゃん、中国のトップ美大の先生になったらしく、すげ〜〜(ファニーなキャラだが、実はものすごいやり手らしい……)スペキュラティブデザインの、西洋だけでないアジア的価値観のローカライズについて最近セッションしたらしく、「うおおお!!そのテーマ!!くっそ興味ある!!!」と興奮してしまった。Biinちゃんに最近面白そうなレジデンシーに誘ってもらったので、実現するといいな……(プロポーザル出さねば……)

めちゃんこ腹減ってたので、Biinちゃん後藤さんでOK Center周辺に飯を求めて繰り出していたところ、リンツ駅でArtHackdayの青木さん、英国在住ライターの森さんに声をかけられ、みんなで行くことに。ここではじめてまともなリンツの美味しいごはんにありつく。肉がうまくて脳汁ぶちあがる〜〜。青木さんごちそうさまです(作品出品おめでとうございます!!とみんなのぶんおごってくれた、、、マジか社長、、、)

解散後、OK NIGHTという美術館クラブイベント行こうと思いましたがスマホのバッテリ切れそうで断念。おとなしく宿に帰宅し就寝。

ABOUT ME
etsuko-ichihara
メディアアーティスト。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web媒体、海外雑誌等、多様なメディアに取り上げられている。第20回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞、総務省異能vation(独創的な人特別枠)に採択。
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