アート

アルスエレクトロニカ初出展レポート⑤:フェスティバル山場の土曜日にブチ上がる

アルスから帰国して一週間あまりが経ち、徐々に記憶が薄れてきているのが少し寂しいのですが(しかも明日から台湾での展示現地入り)
完全に忘れないうちに現地の思い出を書き下しておきます。

ということで、このレポートは、海外展示ビギナーの市原がメディアアートの祭典アルスエレクトロニカで初めての海外出展に奮闘していた日々をまとめた日記的なレポートです。半分自分のための思い出完全まとめ的な感じにつき、読みやすさや要約性などは犠牲にしておりますので、あしからず。前回までの日記はこちら↓

設営初日〜2日目市原えつこのアルスエレクトロニカ初出展レポート①:展示設営編
設営最終日:アルスエレクトロニカ初出展レポート②:設営最終日編
フェスティバル初日:アルスエレクトロニカ初出展レポート③:オープニングで感情が乱高下
フェスティバル2日目:アルスエレクトロニカ初出展レポート④:FISでディープなディスカッション&授賞式

 

フェスティバル土曜日はアルスの山場

土曜日はフェスティバルが最も盛り上がる日でもあるため、朝から基本的に展示現場に張り付くことに。
色んなお客様がやってきて、求めていた情報が怒涛のように入ってくる、刺激的な一日でした。

なおこの日は会場に着く前に契約関連責任者のMariaさんとリンツの市街地でエンカウント。
ちょうど彼女に費用精算もろもろで相談事項があったのでラッキーでした。外国のインボイス(請求書)の作り方がわからなくて困っていたのですが、サンプルを頂けたり丁寧に説明してくれたりでとても助かりました。

説明にも慣れてくる

よっしゃ〜今日は頑張るぞ〜〜っと気合を入れて展示現場入り。
スタッフの方に滞在用の椅子も借りて在廊モードに。

プレスカンファレンスの日には撃沈したものの、この日にもなるとだいぶん説明にも慣れ、あまり困ることなく作品解説ができるようになりました(自分の英語力はその日のコンディションとテンションに依存するのですが、この日は比較的好調でした)

お客様への説明を繰り返すうちに、ユニバーサルに面白がってもらいやすいポイントがどこなのかがだんだん掴めてきました。ロボットの人格を交換するデモが好評だったので(違う人をインストールする、という概念が面白いらしい)その後もちょくちょく実行することに。

 

インボイスの処理もしないといけなかったので、この日は切りの良いところで珍しく一人ランチを決行。
OK Centerの近くのショッピングモールに中華料理ビュッフェを発見したのですが、味噌汁がなぜか含まれており(雑にアジア飯のくくりなのか)、最高……。異国で飲む味噌汁はこんなにうまいのかと感動しました。他の料理も美味しくて、期待せずに入ったのですが超アタリだった。

さすがアルス、お客様が凄い……

午後に現場に戻ると、何やら異様なオーラを放っている方がやってきたのですが、MITの石井裕先生でぶっ飛びました。
めちゃ緊張しながら説明したのですが、「身体を持つ媒体が死者を再現する」ことの両義性は危惧しながらも作品自体は褒めて頂いたり、「アルスではポリティカルな作品が多い中、こういうタイプの作品が受賞するのは凄い。おめでとうございます!」と受賞お祝い頂いたり嬉しかったです。

アルスは凄い人が普通にビジターとしてふらっと出現するのがヤバいな……と実感しました。

その後もなんだかものすごいツボにはまって爆笑してくれてる方がいる…!!と思ったらアルゼンチンの著名なアーティストで、アルスの審査員をされてたり次に参加する海外展覧会の審査メンバーだったりと色々発覚して驚いたり。

なんだかだいぶん愉快な感じのドイツのTVクルーがやってきたり。

作品の趣旨にものすごく共鳴してくれるお客様と話し込んだり(深くコンセプトに興味を持って質問してくれる方が多くて嬉しかった)、NY在住の方からアプライすべきピッタリのプログラムを教えてもらったり、ヨーロッパのデジタルシャーマンと出会ったり(まじマイメン)、とっても良い対話ができて充実した一日でした。展示も常にひっきりなしにお客様がいらっしゃる感じで盛況でした。

夕方になると、いそいそとパフォーマンス衣装である巫女に着替え始めました。落ち着く〜。

博報堂の皆さんの正真正銘リア充ぶりから宴会スキルを学ぶ

色んな人と終日説明しまくり喋りまくり、いい感じにお腹がすいていたので、博報堂の皆さんにお誘い頂いていた大晩餐会にホイホイ遊びに行ってみました(巫女で)。彼らは日本の錚々たる大企業の皆さんを引率しており、自分だったらこの規模の飲み会運営するとなると確実に胃が痛くなる感じなのですが、皆さんひょうひょうと、ユル〜くその場の空気読みながら卒なく号令をかけたりされてるので、これが代理店の宴会対応力か……!!と衝撃。

「最近エンタメに興味がありまして」というお話をしたところ、バンダイナムコの皆さんのテーブルにご案内いただく。バンナムの凄腕プログラマの方々とお話できて楽しかった。今回はインスタレーションを社としてアルスに展示されたらしく、ゲームの開発と体験型アートの開発の違いに今回いろいろと苦労しつつも新鮮だったそうです。

ポルカドットスティングレイの雫さんとやくしまるえつこさんを合成したかのような、クレイジーな感じのサブカル美女社員さんがいらしてド好みだったのでひたすら愛でてしまいました。ありがとうございます。

超大人気、和田永さんの伝説的パフォーマンスに参加

集合時間の9時が近いてきたため、後藤さんと宴会会場を抜けてOK Centerへ。いよいよ和田永さんの一大パフォーマンス「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」が開幕します。私と後藤さんは後半の「電磁盆踊り」でのブラウン管大太鼓叩きニストに任命されていたので、この日に至るまでにリハをちょくちょく挟んでおりました。

こちら大舞台の本番前の様子ですが、相変わらず和田永さんは平常運転な感じで、バケモノみを感じました。

演奏会場は体育館ぐらいあるでかいホールだったのですが、あれよあれよという間に人がつめかけ、このようなギュウギュウ詰め状態に。大人気すぎ。

Photo: Mao Yamamoto

ボーダーシャツァイザー、バーコードシンセサイザー、ブラウン管ドラム、扇風琴、と和田永さん達の近作楽器が余すことなく次々と披露され、息付く間もなく盛り上がりまくる会場。

Credit: vog.photo

そうこうしている間に我々の出番である「電磁盆踊り」の尺が近づいてきました。
「人多すぎて入場が大変すね……」と危惧していたのですが、プロデューサーの清宮さんがいい感じに人をかき分けてくれどうにか通り道ができ、
後藤さんと、昨晩もらいたての賞状をかかげて調子乗りながら登場しました。いえーーーい(演出です)。

Photo: Haruna Kamo

「Congratulations!」と祝った後に、「実は僕も……受賞してましたーー!!!」とすかさず賞状を取り出す和田さん。
会場から暖かい歓声をいただき、超祝われまくり感が嬉しかったです。

それにしても会場の人々が完全にあったまりまくっていて、熱気と圧がすごい。最初は緊張感を持ってピリッと始めたつもりが、

Photo : Noriko Omizo

会場の大歓声とテンションにつられ、最終的にこんな感じに完全にできあがってしまいました。音のグルーブと会場の熱気とのグルーブでとにかく楽しかった。めっっちゃ楽しかったことだけ覚えてて演奏中の記憶が曖昧です……

Photo : Noriko Omizo

演奏終了後も「ワ・ダ・サン!!ワ・ダ・サン!!ワ・ダ・サン!!」と歓声が鳴り止まない会場(結局アンコールもやった)。アルスのヒーロー爆誕した瞬間を目撃した気持ち。

大歓声の中、最前列で見ていた女性から「I love your artwork!!」と声をかけられて嬉しかった。太鼓叩きじゃなくて作家としてちゃんと認識してもらえててよかったw

日本の友達からは「なんか憑依してた感じがした」「フザけてるはずなのになぜか凄みがあって怖かった」とご好評?いただきました。
テクニカルのアンディも見に来てくれてたようで、「Great Performance!!」と褒めてくれたのですが、それまで控えめな東洋人女性で通してた(つもり)だったのでライブでブチ上がりまくっている現場を目撃されるのは若干恥ずかしかった……。まあ化けの皮はいつか剥がれるのだ……。

何はともあれライブは大大大成功。ニコスの皆様、本当にお疲れ様でした&盛会おめでとうございます!!!

Photo: Mao Yamamoto

翌日朝からトークがあった(しかも準備してない)のを思い出し、打ち上げは行かず泣く泣く帰宅……。

この日は本当に思い出が濃く、アルスの一大イベントという感じでした。とにかく楽しかった。
楽しかったフェスティバルも気付けばもう終盤。早いな〜、と少しさびしくなりながら帰宅いたしました。

ABOUT ME
etsuko-ichihara
メディアアーティスト。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web媒体、海外雑誌等、多様なメディアに取り上げられている。第20回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞、総務省異能vation(独創的な人特別枠)に採択。
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