独立

会社を辞めて独立しようと思っているあなたに、退職・独立スタートセット

こんにちは、市原えつこです。おかげさまで無事にフリーランス2年目になりました。

最近はノウハウを無償でブログで公開することで、徳を高めています。これで死後の世界でも安心です。

最近、Twitterで書いて欲しい記事のアンケートをとったところ、
「退職~独立初期のスタートセット」を書いて欲しいというご要望が多かったので、
「自分はこうやった」という手の内をさらしてみます。

個人の経験に根ざしている部分も多いですし、ニーズが合わなければアドバイスはクソバイスとなってしまうので「方向性合わん」と思ったら読み飛ばしていただいて結構ですが
独立を考えている方がいらっしゃいましたら参考までにご覧いただければと思います。


退職までの期間:誠意をもって、且つしたたかに

退職のタイミングは抜かりなく

私は上司に退職・独立の意向を伝えたのが退職の前年の11(ちょっと早すぎた気もします)
ちょうどボーナスももらえるタイミングのため428日を退職日とし、4/5に最終出社としました。
4月は新年度でいろんな会社が新しく何かを始めるタイミングのため、そこにうまくのれた気がします。
そしてボーナスもらうのは大事です。貯蓄があるとかなり気持ちが楽になるので、もらえるもんはもらってしまいました。

退職日が決まったら、まず前提として、退職する日まで会社の仕事はキッチリやった方が良いです。お世話になった会社ですし、最後に「辞めるからって手抜いてるなこいつ」という印象になるとよくないからです。世間は狭いので、特定の組織でマイナスイメージがあるとなんだかんだでどこかに伝わってしまいます。

で、会社の仕事は仕事でやりつつ、プライベートの時間の片手間でできる仕込みを虎視眈眈とやっていました。並行するのはちょっと罪悪感もありましたが、この先生き延びられるかどうかは自分次第なのでサバイバル精神を大事に。。

主にやっておくといいかなと思うのは以下のことです:

1. 自分のプロモーションツールの仕込み

ポートフォリオサイトを作ったり、たまたま案件が舞い込んでいた場合は本業に支障がない程度に案件をやってみて実績を作ったりしました。

プロモーションツールについては前回の記事でもまとめているので良ければこちらをご参考にどうぞ。


後述する独立エントリも強力です。

2. 自分の月々の生活コストを把握する

これがわかってると、漠然とした「会社辞めたら食っていけない」という恐怖から解放されます。マネーフォワードなどのアプリを使って月々の収支を確認してもいいですし、自分でざっくり算出してもいいので、だいたい一ヶ月の生活にどれぐらいのお金がかかるのかを計算してみましょう。

生活費や個人にふりかかる税金や経費を見込んで最初はだいたい月◯0万ぐらいの売り上げを確保すべし、など売り上げの目処を立てると良いと思います。
さらに言うと執筆でこれぐらい、デザインでこれぐらい、、という感じで売り上げの目安をイメージするといいかも。

また、例えば同棲してたりシェアハウスに入居したりして家賃光熱費などの生活コストを抑えると、稼がねば!というプレッシャーから少し解放されるかもしれません。

まずは初期の装備の確認を

独立にあたり、自分の初期装備について確認しました。

フリーランスはドラクエみたいに、レベル1からスタートして装備をだんだん強くしていくようなイメージがあります。

「人脈、知名度や人気、スキルや実績、資金、独自性」みたいなパラメータがあって、それぞれをだんだん強化するような感じです。

初めは弱くて当然です(会社員の片手間でやれることなんてたかがしれてるので。。独立する業態と会社員の頃の仕事が一致している場合は別ですが)

いちアーティストの独断と偏見ですが、各パラメータを簡単に解説してみます。

人脈

フリーランスの生命線のひとつです。会社組織に所属しない代わりに、会社の代わりに社会全体を箱と見立てて個人でネットワークを構築する能力が必要になります。仕事をいただける人脈、逆に仕事をお願いできる人脈、アドバイスをし合える人脈、などなど。

知名度や人気

自分にファンがどれだけついているか。イベント、講演、展示、番組視聴率などの集客力に繋がるため、人気商売的な要素をはらんだ業種の場合は重要です(私はアーティストなので、ここはがんばらねばなりません、、)

SNSの活用やメディア出演などによりこのパラメータが伸びます。

スキル、実績

デザインスキル、ディレクションスキル、プログラミングスキルなどお金に変えられるスキル。

ちなみに「フリーは会社員時代に身に付けたスキルの切り売り」という考え方もあるようですが

自分の実感で言うとあまりそうではなく、フリーランスになってから初めてやったような仕事も多かったです。いきなりヒィヒィ実戦で身につけるという。。スリリングで楽しいです🤑

貯蓄、資金、収入源

資金は生命線なので、当然ながらあるに越したことはないです。会社員時代にかなり貯蓄がたまっているとか、既にサイドワークのブログで稼いでるとか、不動産収入があるとか。

資金に余裕があると、自分の身の振り方や時間の使い方の自由度が上がります。(自分は初期にあまり貯蓄がなかったので、『とにかく働きまくる』の一択になりました)

独自性、オリジナリティ、世界観

会社組織だと特定の個人の性質に依存した、属人性が高い仕事は「再現性が低い」と忌み嫌われやすいですが

フリーランスの場合はアクの強さ、個性、属人性上等!となります。キャラが立ってる方が「あの人にお願いしたい(あの人にしかやれない)」という仕事を引き寄せられるからです。

たとえば発酵デザイナーの小倉ヒラクさんや、「占いオシャレ」で有名なアイビー茜さんなどはキャラ立ちしたオリジナリティの高い存在の良い例だと思います。

アイビーさんのこちらのインタビューは私もよく参考にしました。

3人のプロに聞く「フリーランスで生き抜くための心がけ」と、彼らの仕事を助けるクラウド請求書ソフトの進化

www.lifehacker.jp

 

パラメータを分析し、戦略を立てる

上記のパラメータを分析し、自分なりに初期どう立ち回ったほうがいいかを考えてみました。

私の場合は、会社員時代から個人で作家活動をしていて、作品がバズった(り、炎上した)ことが複数回あったり、東京のメディアアート業界、テック業界を中心に人脈や知名度が少しだけあったりしました。

ただし、会社員としてはIT企業のインハウスデザイナーで外部との接触がなく、クライアントワークを経験したことがないため、会社員時代のクライアントを引き継げる可能性はゼロでした。(例えば代理店や制作会社の社員だと、お付き合いのあるクライアントに独立します!と営業メールを送ったりできると思いますが)

また、スキル的にはいろんなことができるものの一点特化型ではないため(器用貧乏ともいう)

作品制作、デザイン、Web制作、執筆、企画、イベント運営、トークや講演など幅広くできることを提示し、収入源を複数持つことを考えました。特定スキルの一点突破型ではなく、いろんな仕事をやりつつ総合的な世界観やキャラで統一感を持たせるという戦法です。性格的にも飽きっぽくていろいろやりたいタイプなので、結果的に楽しく仕事ができました。

周囲の独立した友人たちから話を聞いても、自分の初期装備によって戦略を考えているなあ、という感じがあります。

・特定のスキルに自信がある場合

(制作会社を独立した実力派のデザイナーさん)

しっかりとデザイナーとしてのポートフォリオサイトを構築し、自分の仕事のクオリティが伝わるようにする & 会社員時代のクライアントに独立報告メール

・人脈がある場合

(飲み会合コンしまくっててとにかく顔が広い総合職の友人)

自分が持っている人脈を片っ端からリストアップしFacebookフレンドをエクセルで整理、仕事に繋がりそうな人に対して自分のできることをまとめて片っ端からメッセでアタック

・貯蓄がある場合

(移住貯金をため、現地に知り合いはいないが沖縄移住した同僚)

目先の利益にとらわれず、のんびり構えつつ長期的に利益が出る仕組みを構築する(じっくり自社メディアをつくって運営)

実際には複数の強み弱みのハイブリッドになることが多いと思いますが

自分なりに仮説を立てて生存戦略を考えていきましょう。

で、会社員の頃の想像や計算はいざ独立してみると良くも悪くも外れることも多いので、実戦を通して戦略を軌道修正していけばいいと思います。

大事なのは「貯蓄がないからダメ」「スキルがないからダメ」と思考停止しないことです。〇〇がないからできない、と言い出したらキリがないからです。弱点があるならそれを補う方法を考えればいいだけなので、やりようはいくらでもあります。

独立初期の仕事の獲得

初期の営業にはいろんなやり方があると思いますが、私の場合は退職・独立エントリ経由でほとんどの初期のお仕事のお問い合わせをいただきました。

自分が公開した退職エントリはこちらです。

【ご報告】ヤフー株式会社を退職して、フリーランスになります | 市原えつこ | note

こんにちは。市原えつこと申します。 2011年に新卒入社してからまる5年お世話になった、ヤフー株式会社をこの春で退職することにしました。 対外的にあまり所属を開示していなかったので、作品や個人の活動から私を知ってくださった方は「え、お前会社員だったの?」と思われる方もいるかもしれませんが、普通に正社員としてフルタイム出勤しながら、仕事が終わったあとの空き時間を使って個人活動しておりました。 4/5が最終出社となります。縁起かついで大安にしました。この記事の公開日も大安です。 ちなみに会社や仕事に不満があって辞めるわけではなくて、 恵まれすぎているほど良い環境でした(だからこそ気付け

note.mu

退職・独立エントリはすごいぞ

退職エントリの拡散力はすごいので、ポートフォリオや職務経歴も兼ねて機能するようなイメージで書きました。

書くときに意識して入れ込んだ項目は以下のような感じです

・簡単にこれまで何の仕事をしていたか説明

・どうして独立するのか(志望動機やポリシー)

・できること、スキル、やりたいことを明示する

・すでに仕事を始めてるのならばサンプルとしてそれも記入

・受賞歴などあればさりげなくアピール

・どんな人なのかわかるように、顔写真を入れて安心感を

・お仕事のお問い合わせ先を入れておく(超重要!!!)

喘ぐ大根こと「セクハラインターフェース」などの際どい作品を作っていたのに実はYahoo! JAPANという「インターネットのNHK」みたいな会社で働いていたので、

「喘ぐ大根の人、ヤフー社員だったのか」というギャップや意外性で初期のバズや話題性を狙ったところもありました。

退職・独立エントリで気をつけること

所属企業の悪口や不満を書くのは当然ながらご法度です。少なくともそんな人に仕事を依頼したくないですし、「私は仕事相手の悪口を言うような不誠実で幼稚な人間です」と世間に吹聴しているようなもので、誰も得をしません。

所属していた企業の名前を借りて自分のプロモーションをさせていただくが退職・独立エントリの正しい認識だと思うので、お礼に相乗効果で所属企業にもメリットや広報効果があるぐらいの感じを目指しましょう。

・また、匿名性が強いメディアだともったいないかもしれません。はてなダイアリーよりはnoteや自分のサイトなど「顔が見える」テイストが強い媒体の方が仕事に繋がりやすそうな印象があります。

・退職エントリを公開してバーン!と周知する前に、「この人と一緒に仕事をしたい!」という人には事前にこっそり報告しておくといいかもしれません。「秘密を共有している」という特別感や共犯感覚が持てるので、懇意にしてもらえるかも(私はこれを全くやりませんでしたが、、ちょっともったいない)

 

いわゆるご祝儀案件というやつかもしれませんが、ポリシーに共鳴してお仕事を依頼してくださる方は現れると思います。それは感謝してしっかりやって、実績を作って次に繋げていきましょう。

とはいえ仕事しないと資金が尽きてゲームオーバーですが、全部受けると今度は消耗して倒れてゲームオーバーになるので、選ぶことはして下さい。もちろん仕事を断るのには不安もありますが、やりたい仕事を選べるのがフリーランスの良さでもあるので。

選択の際にはこちらをご参考にどうぞ:

 


お断りする際にはかわりにその案件にふさわしい方を紹介してあげるなど、先方のご負担を軽減できるとベストです
(あくまで余裕があればでいいですが)

会社を辞めて独立するのはかなーり勇気のいる決断だと思いますが
まぁ、前にも書いた通り日本社会で死ぬことはそうそうないですし、うまくいかなくてもまた就職するのも可能なので、
モヤモヤ悩み続けるよりは思い切ってエイヤでいっちゃった方が良い場合もありそうです。

とはいえわざわざ無計画の丸腰で行くのも得策ではないので、その際にはこちらに書いてあることなどをご参考に自分なりに根回しして用意をしてから飛び出していただければ

以前に独立リーチサインについての記事も書いたので、自分はもう準備ができてるだろうか?と悩んだ場合はこちらもご参考にどうぞ。

 

あと、あぶらののった人気ライターさん達による、こちらのフリーランス座談会も参考になります。

【Vol.1 体力・お金編】フリーランスつらいよ座談会!モリジュンヤ×しおたん×ムラマツヒデキ | A.C.O. Journal

一見、身軽で自由にみえるフリーランスだけど、実は「ツラい!」ことも盛りだくさん。この対談企画ではA.C.O.安田翼がホストとなり、自分の足で立っていながらも、その大変さを身にしみて理解する人々を招き入れ、酒を飲みながらその魅力と過酷さについて語り合う。

aco-tokyo.com

 

確定申告なにそれ美味しいの?という方にはこちらがオススメ

そして気が重い確定申告…。
初年度の確定申告はこの本で勉強+MFクラウド確定申告でなんとか乗り切りました。「ぶっちゃけどこまで経費として計上できるの?」「家事按分ってナニ?」といった痒いところに手が届く本なので超おすすめです。

 

また、クラウド会計ソフトは本当に尊いです。尊い。
とりあえず開業したらすぐにクラウド会計ソフトに登録して、事業用口座やクレカ記録のデータをマメにインポートしておくと、確定申告前に爆死せずにすむのでおすすめです。

ちなみに私が使っているMFクラウドは使いやすいのですが、確定申告書をつくる際にやや敷居の高そうなナリのフォームが出てきて、初心者がいきなりご対面すると絶望する…というハードルがあるのですが(去年、軽く絶望したのは私です)
会計freeeは申告書をつくる時の入力フローがかなりやさし〜く、平易にできてます。下記の通り、めちゃんこ簡単。

経理はサッパリなんだけど、節税のために医療費とか確定拠出年金とかふるさと納税とかの控除分を申告したい!という会社員の方が申告時期にちょろちょろっとfreeeを使うのは便利かもです。

なお、青色申告するのに必要な開業届も開業freeeで簡単に処理できます(会社員の知人もこれで難なく出せてた)。
そもそもそんなに難しいもんでもないので普通に国税庁のページからダウンロードして記入でも良いと思いますが、ちょっと面倒くさそう…と怯んだ方はこちらでサクッとやっちゃうのもアリです。

ただ、競合のMFクラウド確定申告と較べて年会費が少々お高いのがネック…!!
※MFクラウドだと毎月仕訳15件までは無料で使えます。そういう意味ではMFクラウドも費用面においてあまり件数の多くない小規模な副業の処理に良い側面はあるかも

MFクラウドはデータの提携機関がとにかく充実しているのと、インターフェースがシンプルなのが気に入ってます。

開業を見据えているサラリーマンは確定申告を事前に体験すると安心

あと、個人的には副業サラリーマンの頃に確定申告してたら良かったなー、と思ってます。

独立開業してからは様々なタスクが並走して超絶バタバタするので、各種届出に新規営業に打ち合わせ、案件の実行etc…で手一杯になって、正直その傍らで経理の勉強や準備にまで手を回すのは無理ゲーでした。
(その結果、1年目の節税対策がグダグダで、2年目に重税がやってきて苦しむという…)

まだ取引が少ない副業時代に、ざっくりとでも確定申告の概要を理解しておくと、ただでさえ忙しい独立後の懸念事項が減ってラクになると思います。
利益が20万超えてなかったり、ふるさと納税など控除になるようなものもない場合は無理にやる必要もないのですが、とりあえず軽く調べたり軽く無料プランを触って概念をザックリ理解するだけでも開業1年目の経理の大変さや開業翌年の税金の負荷が変わってくるのでおすすめです。

 

ではでは、良い自営ライフを~😇

ABOUT ME
etsuko-ichihara
メディアアーティスト。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web媒体、海外雑誌等、多様なメディアに取り上げられている。第20回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞、総務省異能vation(独創的な人特別枠)に採択。