アート

スロベニア・Speculum Artium Festivalで展示してきました

スロベニアのSpeculum Artium Festivalというメディアアートフェスティバルに招聘いただき、10/14-20までスロベニアに滞在していました。
自分の奇祭が大詰めのタイミングだったので阿鼻叫喚になりながらの渡航でしたが、楽しかった……すっかりスロベニア大好きになりました。

スロベニアは小さな国だが芸術に力を入れ、アルスエレクトロニカのグランプリを受賞したMaja Smrekar氏をはじめ、特にHybrid Art、Bio Artの分野でパワフルで優秀な女性アーティストを多く輩出しています。
Speculum Aritumはスロベニアのメディア・アートシーンで重要なフェスティバルとして、10年ほど継続し開催されているようです。初代の立ち上げ人Zoran Pozničさんは現在ではなんとスロベニア共和国の文化大臣に、そしてオーガナイザーは女性アーティストのMasa Jazbecに継承されています。

実は2017年、2018年とずっと招聘のお誘いをいただいていたのですが、ことごとくメディア芸術祭&アルス・エレクトロニカの授賞式や受賞展覧会がバッティングし行けず……
2019年の今年、ようやく満を持して伺いました。

会場はDelavski dom Trbovljeという文化施設。ギャラリー、劇場などが複合的に組み合わせれた、歴史ある施設のよう。
なお、ホテルからは徒歩30秒。バリ近。

一番でかいホールを与えられた件

今回与えられた展示スペースが、なんと一番でかい場所で、事前に聞いてはいたけど現場に行ってビビる。
会場Delavski dom Trbovljeのシンボルになっているホールで、これまでASIMOや阪大の石黒浩先生など、主要な日本の作品・アーティストが展示した場所らしい。

でかすぎて、逆にスペース埋まるのか!?と心配していましたが、Masaやテクニシャンの方々と相談したり協力いただきながら、なんとかハマるレイアウトを見出した。

あと設営で現地のテクニシャンや現地企業の方々と協業してみてわかったのですが、スロベニアの人たちはめちゃくちゃ真面目でよく働く。しかも完璧に。
日本人とは国民性が似てる気がして、不思議と居心地が良かったです。イタリアの隣の国だとは思えない……

展示場所もそうですが、今回プレスリリースでも目玉として謎にフィーチャーしていただいたようで、
滞在中、自分が認識している(直接答えた)ものだけでテレビ局からの取材2件、ラジオ局からの取材が1件ありました。

Yaskawa motomanとのコラボレーション

今回はYaskawa motomanスロベニア法人とコラボレーションをフェスティバルから提案され、「人型ロボットとロボットアームの間で、魂が乗り移るデモ」を開発しました。
実は今回これが最大に胃痛だったイベントで、なぜなら私はロボットアームを一度も使ったことがなく、今回Yaskawa側の担当者だったErih Arcoは現地法人のプロダクションマネジャー、そんな偉い人をこんな変なプロジェクトに巻き込んでいいのか……?しかも結構振り付けってタイミングがシビアなんだけど、英語で伝えられるのか……?と不安MAX。

しかし幸い杞憂に終わり、Erihはすごくアーティストとのコラボレーションに対して協力的な方で、こちらがやりたい振り付けの意図を完璧に理解し、運用がしやすいように目にも留まらぬ速さでティーチングのプログラムを組んでくれました。しかもなんだか異様にウマが合う。

ロボットアーム関連のプロジェクトもたくさん紹介してくれ、他のデバイスとの組み合わせ次第でかなり色々と可能性の広がるマシンなんだなと。今後も産業用ロボットとは協業していていきたくなった。

あとからErihとディスカッションして気づいたのが、今回のコラボは一見ジャストアイデアのようで、案外これは象徴的な、東洋と西洋のロボット観のマリアージュなのでは、、と思った。ヨーロッパの人々にとって、「ロボット」とは一般的に産業用の用途を指すから、日本のロボット観(ツールというよりは仲間とみなす)はすごく面白いらしい。

Erihが後からオーガナイザーのMasaに、「日本の本社から視察に来る人はいてもだいたい英語が喋れないんだけど、彼女はしっかり英語でコミュニケーションができるし、良いコラボレーションだった」と後から話していたらしく、大変うれしかった(自分ごときの英語力でも褒められるのかと……)

私は自分一人で作品制作が完結しないディレクター&プロデューサー型のアーティストなので、 自分の母国語圏以外での滞在制作は厳しいのでは(情報伝達精度が落ちるから)と思い込んでたのですが 今回初めて海外で現地法人の技術者と協業してみたら意外と全然アリ、むしろ面白みを感じ、目から鱗でした。
語学力にさほど長けてなくても細かくイメージを伝える方法は色々あるし(仕様書や動画やイラストなど) 技術の話は普遍性があるので、不慣れな言語でも通じやすいし むしろ文化的差異があった方が協業相手にも面白がってもらえることが分かったので この方向で色々試してみたくなりました。押忍。

スロベニア小学生のファンがたくさんできた

フェスティバルがオープン直後から、スロベニア中の幼稚園児、小学生や中高生がツアーでがんがんやってきた。本当に波のようにやってくる……。パワフルですごい。

なんでこんなに子供いっぱい来るんだろう?と思っていたのですが、そもそもこのフェスティバルが教育的な側面を重要視しており、「30年後にこの国を率いることになる、子供たちへの教育を重視している」と共同主催者のBogdanがシンポジウムで明言しているのを見て納得しました。

シニアのグループもいたり、アート関係者のみならず広い年齢層のお客さんが来ていた。

地元の子どもたち、超かわいかったです。作品が予想以上にエンゲージしていたらしく、初回に作品を見た後にもずっと展示に通ってくれる子が結構いました。

 

 

お手紙も色々もらった。うれしい。

ちょっと、、、ヤダ、かわいいんですけど……

 

Socializationの機能

スロベニアはオーストリア、イタリアなど他の国からもアクセスが良いためか、他の国のアーティストたちもたくさん展示・滞在していました。

リンツ在住のサウンドアーティストStefanや、ネットアーティストのSofia Braga、ドイツの人工衛星をテーマにした作品をたくさんつくっているセバスチャン(私と同じ年度にアルスのインタラクティブアート部門で受賞してた)など。
ロンドンのVRアーティスト、ニコラ・プランツは快活でお洒落な女性アーティストで、すぐに大好きになった。

私をフェスティバルに招聘してくれたMasa Jazbecは言わずもがなめちゃくちゃ素敵な人だし(実はアルスエレクトロニカの審査員も歴任、私の受賞時の審査員でもあったので感謝、、)

Masaの妹バーバラ・ジャズベック、そしてフィンランド人の友達Janina Joutsenのコンビは悪友感がすごくて超楽しかった。

 

共同主催者として、旅程や輸送をいろいろと面倒みてくれたBogdan Stehはすごく誠実な人柄でみんなのお父さん感あった。最後も見送りに来てくれ嬉しかったです。

そんなこんなで、多くの人との思い出ができて、スロベニアという土地との縁がものすごく濃くなったような感じがあります。
会いたい人がたくさんできたので、また必ず行くぞ……という気持ちでおります。押忍。

ABOUT ME
etsuko-ichihara
メディアアーティスト。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web媒体、海外雑誌等、多様なメディアに取り上げられている。第20回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞を受賞、総務省異能vation(独創的な人特別枠)に採択。
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